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脳性麻痺や四肢麻痺のお子さまは、むし歯・歯肉炎になりやすい?

このようなことはありませんか?

脳性麻痺や四肢麻痺のあるお子さまで、「毎日歯みがきをしているのに、むし歯になったり、歯肉炎を起こしたりしやすい」と感じることはありませんか?

これは、歯みがきの仕方だけが原因とは限りません。
脳性麻痺などによって、口を動かす機能や食べ物を飲み込む機能、手を使って歯ブラシを操作することなどに難しさがあると、口の中に汚れが残りやすくなることがあります。

今回は、脳性麻痺や四肢麻痺のあるお子さまが、むし歯や歯肉炎になりやすい主な理由について解説します。

口の中の「自浄作用」が働きにくいことがある

私たちの口の中では、食事をしたり、舌や頬を動かしたり、唾液が流れたりすることで、自然にある程度の汚れが取り除かれています。

唾液には、このような作用があります。

  • 口の中を洗い流す作用
  • むし歯の原因となる酸を中和する作用
  • 歯の表面を保護する作用

しかし、脳性麻痺などによって舌・唇・頬などの動きに制限がある場合、口の中の食べ物や汚れを十分に動かして外へ出すことが難しくなることがあります。

厚生労働省の資料でも、脳性麻痺では「口腔衛生管理の不備や口腔機能の障害による自浄作用の低下」により、むし歯や歯周疾患のリスクが高くなることが示されています。
そのため、歯みがきだけでなく、口の中に食べ物が残っていないか、歯と歯ぐきの境目に汚れがたまっていないかを確認することが大切です。

歯みがきが十分にできないことがある

四肢麻痺などで手や腕を自由に動かすことが難しい場合、自分で歯ブラシを持って歯をみがくことが難しくなります。
また、脳性麻痺では、手の動きを細かくコントロールすることが難しい場合もあります。

歯みがきは単純に「歯ブラシを口に入れる」だけではありません。

  • 歯ブラシを握る
  • 適切な場所まで動かす
  • 力加減を調整する
  • 歯の裏側までみがく
  • 歯と歯ぐきの境目に毛先を当てる
  • みがき残しを確認する

など、複数の動作が必要です。

そのため、お子さま自身で歯みがきをすることが難しい場合には、保護者や介助者による仕上げみがきが重要になります。
ただし、「仕上げみがきをすれば十分」というわけでもありません。

お子さまによって、口の動かし方や歯並び、食べ方などが異なるため、歯科でみがき方を相談し、その子に合った方法を見つけることが大切です。

食べ物が口の中に残りやすい

脳性麻痺のあるお子さまでは、舌や頬などを協調して動かすことが難しく、食べ物を口の中からうまく移動させられないことがあります。
その結果、歯と歯の間や頬の内側、歯ぐきの周囲などに食べ物が残りやすくなることがあります。
食べ物の残りや歯垢が長時間残っていると、むし歯や歯肉炎につながる可能性があります。

特に、食事に時間がかかるお子さまでは、口の中に食べ物が長くとどまることもあるため、食後の口腔ケアが重要です。

唾液や「よだれ」の出方にも特徴がある

脳性麻痺のあるお子さまは、よだれが多いことがあります。

一見すると「唾液がたくさん出ているから、口の中も潤っていてむし歯になりにくそう」と思うかもしれません。
しかし、脳性麻痺に伴うよだれは、必ずしも唾液の分泌量が多いことが原因ではありません。

唇や舌、喉の動きの協調が難しく、唾液をうまく飲み込めないことで、よだれとして外に出ている場合があります。
そのため、「よだれが多い=口の中がきれい」とは限りません。
お口の中の状態を実際に確認することが大切です。

歯肉炎にも注意が必要

歯肉炎は、歯と歯ぐきの境目などに歯垢がたまることで、歯ぐきに炎症が起こる病気です。
脳性麻痺のあるお子さまでは、口腔内の清掃が難しかったり、食べ物が残りやすかったりすることで、歯垢が蓄積しやすくなることがあります。

その結果、

  • 歯ぐきが赤い
  • 歯ぐきが腫れている
  • 歯みがきすると出血する
  • 口臭が気になる
  • 歯ぐきに歯垢や歯石が付いている

といった症状が見られることがあります。
実際に、脳性麻痺のあるお子さまは、一般の子どもと比較して口腔衛生状態や歯肉の健康状態が悪い傾向が報告されています。

「歯みがきができていないから」と考えすぎないことも大切

むし歯になったり、歯肉炎を起こしたりすると、「歯みがきが足りなかったのかな」と考えてしまうかもしれません。

しかし、脳性麻痺や四肢麻痺のあるお子さまの場合、口腔内の状態には身体の動きや口腔機能、食べ方など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、単純に「もっと頑張って歯みがきをしましょう」というだけでは解決できないことがあります。

大切なのは、お子さまの身体の状態や口腔機能に合わせて、無理なく続けられるケア方法を考えることです。

一人ひとりに合わせた口腔ケアを

脳性麻痺や四肢麻痺のあるお子さまでは、

「どこをみがけばいいのか分からない」
「歯ブラシをうまく動かせない」
「口を開けていることが難しい」
「食べ物が口の中に残りやすい」
「歯科医院での診療が難しい」

など、さまざまな困りごとがあります。

そのため、歯みがきだけに注目するのではなく、

  • どのように食べているか
  • 舌や頬をどのように動かしているか
  • 唾液をどのように飲み込んでいるか
  • どこに歯垢や食べ物が残りやすいか
  • 本人やご家族がどのように歯みがきを行っているか

などを含めて、お子さまに合った口腔ケアを考えることが大切です。

むし歯や歯肉炎を防ぐために

ご家庭では、できる範囲で毎日の歯みがきを続けることに加えて、定期的に歯科で口の中を確認してもらいましょう。

エンゼルデンタルクリニックでは、脳性麻痺や四肢麻痺のお子さまを対象に、訪問歯科診療をおこなっています。
訪問歯科診療では、むし歯や歯肉炎のチェックだけでなく、歯みがきの方法や介助の仕方、みがきにくい場所の確認などについて相談することもできます。

「歯みがきをしているのにむし歯ができる」
「歯ぐきから出血する」
「口の中に食べ物が残りやすい」
「自分で歯みがきをすることが難しい」

といった場合も、決して珍しいことではありません。

お子さまの身体の状態や口腔機能に合わせて、できる方法から少しずつ口腔ケアを整えていきましょう。

脳性麻痺や四肢麻痺のあるお子さまの歯科診療では、むし歯や歯肉炎の治療だけでなく、「その子ができる方法で口の健康を守ること」も大切です。

“監修歯科医師
監修歯科医師 山路 歩
エンゼルデンタルクリニック 院長
歯学博士 / 日本審美歯科学会 / 日本小児歯科学会 / 日本口腔外科学会 / 日本保存修復学会 / 日本障害者歯科学会 / 日本アンチエイジング歯科学会認定医 / ホワイトニングエキスパート / サプリメントアドバイザー取得